孤高の御曹司は授かり妻を絶え間なく求め愛でる【財閥御曹司シリーズ黒凪家編】
クールな旦那様は無自覚に嫉妬する
 八月も中旬を過ぎた昨日、香苗さんから電話があった。『旅行のお土産を渡したいから持っていってもいい? ふたりの家がどんな感じか興味あるし』と、いつもの朗らかさで。

 お盆休みは私たちも旅行をした。香苗さんたちは海外へ行ったようだけれど、私は国内すら旅したことがほとんどないので、沖縄で二泊することにしたのだ。

 透き通った青い海や白い砂浜はもちろん、真っ赤なハイビスカスも、いたるところにいるシーサーも。なにもかもが初めて見る景色で感動しっぱなしだった。

 素敵な場所は国内にまだまだたくさんある。私はそれを知らずに生きてきたのだと思うと、なんてもったいなかったんだろうと少し悔しくなる。

 全部、奏飛さんと出会わなければ知らないままだった。心が洗われるような美しい景色があることや、飛行機に乗って空を飛ぶ感覚。ひとりじゃない安心感も、涙が出そうになるほど人を愛することも。

 奏飛さんが好きだと自覚してから、毎日見る風景がワントーン明るくなったような気がする。心臓も活発に動いているし、視線はいつも彼を追っている。

 気持ちひとつでこんなにも世界は変わるんだ。いや、変わったのは世界じゃなくて、私自身なのか。
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