孤高の御曹司は授かり妻を絶え間なく求め愛でる【財閥御曹司シリーズ黒凪家編】
シンデレラの魔法は半強制的にかけられる
 突然現れた財閥御曹司は、私の手を引いて再び玄関へ向かう。インターホンを押す彼の表情は、汗が滲んでいても涼しげでセクシーだ。

 この人と、これからなにをするのだろう。叔父たちにひと泡吹かせるってどうやって? 私が黒凪さんと一緒にこうして並んでいるだけで文句を言われそうな気がするのだけど……。

 ひやひやしつつ考えを巡らせていると、玄関のドアが開いて叔父が姿を現した。

 彼は一瞬私を見て〝お前はなにをしているんだ〟というような顔をしたが、すぐに私の存在などないもののようにシカトする。

 上品な営業スマイルを浮かべる黒凪さんは、私と話していたことなど感じさせない。

「外観や庭もすべて拝見いたしました。綺麗に保たれていますね」
「ありがとうございます。外壁は二年前に塗り直しましてね……」

 話しながら中へ上がるふたりの後を、私は縮こまってついていく。すると、リビングに入る前に黒凪さんがさりげなく私に顔を近づけ、「深春さんはここで待っていて」と耳打ちした。

 言われるがまま、リビングでまとめの話をする三人を廊下からこっそり眺めていた。数分で話を終えたらしく、黒凪さんが姿勢を正して軽く頭を下げる。
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