転生(未遂)秘書は恋人も兼任いたします

「俺がちゃんと真面目に生きてきてたら、こんなことにはならなかった。それなのに、俺の過去を紗良も一緒に背負えなんて、都合が良すぎるよな」

「…そんな…」

「巻き込んでごめん。いつか紗良の笑顔が見れたらいいと思ってたのに…笑わせるどころかこんなに泣かせて、ほんと最低だな」

「やめて、これ以上自分を責めないでください。逸生さんは何も悪くないですよ」

「……」

「最後くらい、いつもの逸生さんでいてください。私は逸生さんの笑顔が大好きなので、楽しくなるように得意のギャグを披露していただいてもいいですし」


そう言う私も涙声だけれど、私の言葉に「それこそ笑わねえじゃん」と零した逸生さんは、フッと眉を下げて力なく笑った。そして「紗良」と私の名前を囁くと、静かに影を落とした。

触れるだけのキスをして、至近距離で視線が絡む。


「俺ら、今日はまだ恋人なんだよな」

「……」

「もう1回、していい?」


あれだけ身体を重ねたのに、逸生さんは体勢を変えて私を組み敷くと、熱を孕んだ瞳で見下ろしながら再び求めてくる。

正直言うと、もう身体を動かす体力はない。けれど、迷うことなく自然と頷いていた。

一生忘れられないくらい、逸生さんを身体で覚えておきたかったから。



「…逸生、さん…好き…っ」

「…俺も、好きだよ紗良」


泣き声なのか、喘ぎ声なのかも分からない。その後も、涙を流しながら何度も愛の言葉を交わし、身体を求め合った。

さっきと同じ行為なはずなのに、どうしてこうも全てが違って感じるのだろう。甘さなんて、殆どない。


──その後も何度も愛し合ったけれど、心が満たされることはなかった。

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