大人気アイドルとの恋は刺激強め
読み終わったのは、日が変わる直前だった。





目から止めどなく落ちる涙が、
台本に付いてしまわないように
部屋にあったティッシュで拭った。





切なく美しい恋物語を描いたこの作品は、
そんなに現実離れもしてなくて
心に広がるものがあった。






「作りたい」





素直にそう思った。







溢れるものが多くて、
この感情をちゃんと残しておきたくて
急いで机にかじりついて
作詞ノートに箇条書きしていく。

手は止まるところを知らないように
ずっとずっと書き続けた。






やっと手を止めれた時にはもう
外が明るくなり始めていた。





昨日、お姉ちゃんが
朝早くから雑誌の撮影だーって
ボヤいていたのを思い出して、
急いで一階に駆け下りた。





ドタドタしながら降りてきた私に、
すでに起きていた家族みんなが
驚いたように振り向いた。





「李純どうしたの?」





お母さんの声掛けにも応じる余裕はなかった。






大人気モデルらしからぬマヌケ顔で
パンを加えてフリーズしてるお姉ちゃんに
貸してもらった台本を差し出す。




「……やりたい。この作品の主題歌作りたい!」





しばらくボーッとした顔から動かなかったけど
「ほんと、?やる?」って気の抜けた声。

いつもの快活さからは一切想像できない。






「うん、やる!やりたい!」






「………やったー!!!!!」






食べかけのパンを放って、
私を抱きしめたお姉ちゃん。





「李純ほんとに?取り消し無しだよ!?え!夢?夢じゃない?がち?あーもうやばい!嬉しすぎる!朝から雑誌の撮影とか殺す気か!って思ってたけどもう今からなら全然あり!最高にいい表情できる気がする!最高!」





「お、お姉ちゃん落ち着いてよ……」






興奮しまくりのお姉ちゃんは
1人でひっきりなしにはしゃいじゃって、
もう無双状態になっちゃった。





お母さんとお父さんは、
私たちが抱き合ってるのを
優しい目で見つめてる。






いつの間にか、
世間からの評判とかっていうのは
私の中から消えていた。





「じゃあ、監督に李純の撮影見学の許可と新しい台本お願いしとくね!あと監督にだけ私の妹っていうの伝えるね!あ、もう迎え来たみたいだからいってきまーす!」





相変わらずのお姉ちゃんは、
嵐のように家を出ていった。






部屋に戻ってベットに寝っ転がる。







一晩寝てなかったから、
すぐに睡魔が襲ってきて、
これから作る曲のイメージを膨らませながら
静かに目を閉じた。













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