まじないの召喚師 ー生まれ変わりの花嫁ー
 


「迎えにきたよ」



「………なんで」



「また放課後って約束したよね」



「それは………」



イカネさんに言ったのであって、火宮先輩に向けて言ったわけではない。


わかっていて利用しやがりましたね。



「あの人、昼休みも先輩を連れて行った…」



「放課後も火宮先輩と一緒にいるってずるくない?」



「見せつけてるの? 性格悪っ!」



また、周りの目が痛い。



てか、私が連れて行ったわけではない。

先輩が勝手に来てるだけなのです。


私は被害者だ、と、声を大にして言いたいが、それができないのが小心者たる所以である。



「じゃあ、一緒に帰ろうか」



お断りします、と言えないのが小心者たる以下略。

私は急いで荷物をスクールバッグに突っ込み、小走りで教室を出た。



「あはは、待ってよ」



歓声か悲鳴かを起こしながら奴が迫る。


完全に捕食者のアレじゃないですか。


命の危機を感じて、途中から全力疾走になる。


校門を出てすぐ、イカネさんを喚んだ。



「どうしよう話聞いてくれないアレ何!?」



「落ち着いてください」



「とりあえずどこかに逃げて……」



「残念。追いかけっこはここまでだ」



すぐ後ろから声が聞こえた瞬間、手首を掴まれ、脇道へ引き摺り込まれた。



気付けば、両手首を頭の上に押さえつけられ、お綺麗な顔が迫る。


手際いいなぁ。

手慣れてやがる。

イケメンはこういうことよくやっているのかもしれない。



「お前、俺を前にしてよくも逃げてくれたな」



「………」



チンピラよろしく凄まれる。


昼休みにも思ったけど、学校では爽やかイケメンなくせに、素敵にねこかぶってやがりますのね。



「まただんまりか?」



「いやいやいやいや」



あの状況なら誰でも逃げるでしょ。

チキンなボッチの小心者をお舐めでないわよ。



「何度も言わせないで、その人を離しなさい」



「今俺に手を出すとこいつにも当たるけどいいのか?」



私に密着してるのは、イカネさんの攻撃を封じる為。



「くっ………」



イカネさんは右手に纏わせた雷を消す。

人質に使われてる私、すごく足手まといじゃないですか。

両手は壁に押さえつけられて動かせないし、両脚の間に膝を入れられて動かせないし、とにかく自力じゃ抜け出せない。




< 14 / 79 >

この作品をシェア

pagetop