彫刻
「どう?何かあった?」穴の上からルリが聞いた。

「宝物じゃなかった。女の顔の彫刻。気持ち悪いから見ないほうがいいよ」そう言って見上げた俺は、びっくりした。上から覗いていたのは、ルリ、そしてその横に、蓑虫少年がいたんだ。手には彫刻刀、刃の先には目玉がひとつ刺さっていた。

「おい、ルリ!離れろ!」俺達は慌てて穴から飛び出した。

一瞬、小屋の中でパニックになりかけたが、おじさんの声でなんとか落ち着いた。

「おい、落ち着け!落ち着くんだ!みんないるか?」

そういいながら、おじさんは一人一人照らして確認した。俺、ジロ、ルリ。

「おい、1人足りないな、ルリちゃん、もう1人は?」

「わたし・・・、隣に居たのがずっとゼンだと思ってた・・・」

「やばい!ゼンを探せ!」

俺たちは小屋の外へ出て辺りを探した。すると小屋の影にゼンの背中が見えていた。

「おい、ゼン!なにしてる!あやつがいたぞ!」俺はそう言ってゼン肩をつかんで振り向かせた。

ゼンは目玉を繰り抜かれていた。あいつの彫刻刀に刺さってたのは、ゼンの目玉だったんだ。俺はやっと気づいたよ。あいつはとんでもない化け物だったんだって。

ゼンの意識はなく、ぽかんと口を開けて左右にゆらゆら揺れていた。どんなに呼びかけても、ゆすっても、正気に戻らない。もう、わけがわからなかったよ。

とにかく、俺とジロで、ゼンを抱えて、なんとか民家のところまで戻ってきた。そして、俺は置いて行った懐中電灯を拾いに行き、おじさんは、そこの民家へ助けを呼びに行ったんだ。

俺が懐中電灯を拾い上げた頃、ジロとルリは向こうの方で、闇に向かって、じっと立っていた。闇の中からかすかに変な音が聞こえる。ギィ~、ギィ~って。

君も聞いたって言ったな、歯ぎしりの音。焼け死ぬ時の苦しみで、歯を食いしばった時の、深い怨念のこもった音だ。

そしてふたりは、両手をぶらんと下げて、意識が飛んだ。そして、自由を失ったふたりに、あいつの残酷な儀式を俺は見た。
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