あさまだき日向葵
──翌朝
午前中に終わらせたいところまで進まなくてイライラしていた。昨日終わらなかった分の皺寄せだ。直接塔ヶ崎に関係ないとはわかっていても腹が立つ。

念のため、塾の用意もして、ふと気づいた。……私服だ。当たり前だけど、私服で会う。塔ヶ崎くんといえばすごい服装にこだわりのあるおしゃれな人だ。
ダサイって思われたらどうしよう。鼻で笑う塔ヶ崎くんの姿が想像出来てしまい、頭を抱えた。

家ということは、塔ヶ崎くんの部屋へ入ったりするのだろうか。そうなると、サンダルなら裸足でおじゃまするのはどうだろう。それに、足の爪、ネイルも塗ってないし。

ああ!面倒くさい!
何って、どうしてこんなに塔ヶ崎くん相手にこっちがバタバタしなきゃならないのか。
嫌いな相手だというのに、向こうにはそう思われなくないだなんて身勝手な感情だ。
どのみちもうどうにもならない。
クローゼットも引き出しも全部開けてみても、あるのはファストファッションのシンプルなものばかり。

母親がアイロンは当ててくれている。白の無地Tシャツにストレートのデニム。身長が止まってから、ずっと履いてるやつ。靴下、スニーカー。
そりゃあ、服なんてあるわけなかった。家と塾の往復だけだし、学校の外で男子と二人で会うこと自体、初めてじゃないの、私。
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