あさまだき日向葵
「あっちぃ」
やっとゴールすると辺りを見回した。

「あれ、みんなまだかな?」
「なあ、声聞こえねえな」

家族連れならいるんだけど……
しばらく待ってみたけれど、誰も来ない。

丘になっているところから、迷路の全貌が見下ろせるからそこから見てみると、塔ヶ崎くんがまたゲラゲラ笑った。

「帰ってんじゃん、あいつら! 呼び出しといて! あはは! 二人になりたかったんじゃねえの」
「……え?」

二人……?あれはペアだよね?

「……ま、いっか。こういうの嫌いじゃないなー。な、聡子。二人、だね」
「……あ、うん。私も二人になりたかった」
「…………」
「どうしたの?」
「いや、そう返ってくるのは、ちょっと、嬉し恥ずかし、だな。ここ、めっちゃ迷路見れるな。ここ上がってから迷路挑めば案外すぐ出れたかも」
「……ズル……いや、本当だね。よく見えるように」
「って、見てないじゃん、聡子。俺、見てるんじゃん」
「うん、だって、ひまわり映ってる」
「……いや、ひまわりは映らないから、光ってないから」

ちょっと近づくと、照れて後ずさりする塔ヶ崎にわざと抱きつく。

「うわ、ほら、ここ、目立つから! 向こうから丸見えだから!」
「ははは! でも、みんなに見てほしいくらい」

顔にひまわりは映ってないけれど……塔ヶ崎くんの綺麗な目には私だけが映っていた。

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