あさまだき日向葵
「たぶん、違うと言ったけど、たぶん、そうなのかとも思ってきた。でな、聡子……嫌われてるならともかく、好かれてたら動揺するよ、俺だって」
また一呼吸置くと

「動揺、してますよ」とボソリと呟いた。

とても動揺しているようには見えなくて、じっと見てしまう。
また眉根を寄せていたようで
「眉間の皺! それが好意的な視線だとは……誰も思わないだろ?」
「私も……そうだとは思ってなかった。ああ、びっくりした」
呟くと

「何だそれ!」と、困ったように笑われてしまった。
チラチラと淡いブルーが見え隠れして、とても綺麗だ。

「何?」
「水色、綺麗だなって思って。そのTシャツも似合ってる」

すらすらと褒める言葉が出て来て自分でも驚くけど、塔ヶ崎くんは謙遜したりせずに

「だろう? こんなにこの色が似合うのは俺かさざ波くらいだね」
冗談とも本気とも取れる顔で笑った。

「さざ波って水色? 白じゃないの?」
「さあ、どうだろ」

常に同じ形で静止しない波は、太陽の光を反射して銀色にも見える。深い海の青と、波の白と……確かにこんな色が似合うのは……

「ふっ、そうだね」
塔ヶ崎くんくらいかもしれない。私が笑うと塔ヶ崎くんは照れ臭そうに笑ったから、さっきのは冗談だったのか……な?
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