あさまだき日向葵
家に帰ると、少し遅い夕食の時間になっていたが、母親が作ってくれていたスコップハンバーグ(丸めるのが面倒だったらしい)と、きゅうりとトマト、じゃがいもの冷たいスープ(何かおしゃれな名前だった)を短時間で食べると、自室に戻った。

すぐに「エアコン代もったいないからリビングで勉強しなさい」と、シビアな事を言われ、一人になるよりは捗るかと塾の課題を持ってダイニングテーブルの上に広げた。

塔ヶ崎くんの家とえらい違いだなあ。私は一人っこだし、家族3人ならこのくらいで充分なんだけどさ。
……結局塔ヶ崎くんの事を考えてしまい、慌てて集中した。
明日の朝の分までやっておこう。念のためだから、念のため。そう言い訳する。

──いつもより捗ったのは、朝に課題を残したくないからだと思う。この感情が好きな人(仮)に会いたいがためならば、すごいエネルギーだと思う。
課題が終わると足の爪に色を乗せていく。不慣れなもので、すぐはみ出してしまう。母親が物珍しそうな、視線を寄越してきたけれど、集中してて気づかない振りをした。
ただ、「もう少し目立つ色にしたらよかったのに」と、言われたことには完全同意、の気持ちだった。ギリギリ塗ってるってわかるくらいだ。これが乾くまでの時間も、今日の復習のために使った。

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