あさまだき日向葵
「私、おにぎりも作れないよ」
「……え? 握るだけじゃん」
「ラップでぎゅって?」
「すぐ食う場合はラップ使わないけど……。うちは留守番多かったからなあ。ある程度の生活力は勝手についたよね」
「意外。お手伝いさんとかいそうなのに」
「……曾祖父母の時代はいたらしいけど、時代の流れですかねえ。祖父母があまり他人を入れたくない人で」
「私、ものすごくお邪魔していますけど……」
「はは! 友達はいいんだよ。むしろ、お客さんはしょっちゅう来るよ、この家」

9人家族で尚且つお客さんがくつろげるスペースがある家、だもんなあ。

「そうなんだ、本当うちとは真逆。私の友達が時々来てたくらいかな」
「……そういうのが、羨ましい時期もあったよ。自分のペースで何もかも出来たらなあって」

……塔ヶ崎くんは、いつも自分のペースで動いてそうだったのに、そうでもなかったのか。むしろ、学校では自由で団体行動が苦手そうに見えた。
団体って言って良いほどの家族数だけど。家では家族に合わせてるってことか。

「……そっかあ、賑やかで楽しそうだけど、自由はそんなにないの?」
「自由だけどね、みんなが。兄弟の上のペースに下は合わせられないし、下のペースにも上は合わせられないし、真ん中の俺の立ち位置、微妙」

そうか、一番上の兄弟と一番下の兄弟では年の差が結構開いてしまうのか……。
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