あさまだき日向葵
日差しは日傘で弱められたけれど、熱気はすさまじい。蝉の声もすさまじい。

この日も塔ヶ崎家へ向かう。毎日、何をするわけでもなく午前中は二人で過ごしていた。もしかしたら……

「塔ヶ崎くん、一人が寂しいの?」
毎日、私と会うのはそのせいか、と思ったんだけど……すごい驚かれたのでどうやら違うみたいだ。

「あのなあ、聡子。俺全然一人で平気だから!」
その言い方が強がった幼児みたいで吹き出してしまった。それがまだ気に入らなかったらしい。塔ヶ崎くんはムッとし顔をした。

「ごめん、だって。いつも誰かがいるお家でしょ? 夏休みは寂しいのかなって」
「……一人じゃねーし、猫いるし。つーか、昼過ぎには妹と弟帰ってくっし」

そうか、猫がいるか。猫はにも色々いて、トマト親子は人見知り。プラムはこちらから近付くとまんざらでもなさそう。
フェニックスとパーシモンは甘えん坊。

私も将来一人になったら、猫を買おう。留守番で寂しい思いをさせちゃうかもしれないから2匹以上、買おう。そうすれば、孤独ではないのかな。

「確かに、5匹もいたらね。大人しい猫ちゃんだけど。私も将来猫飼おう」
「今の家ははペット不可?」
「ん? いや、大丈夫だと思うけど?」
「将来って言うから」
「ああ。将来、一人でしょ? だから、猫いたら孤独じゃないかなーって」

そう言うと、塔ヶ崎くんがフェニックスのお腹をこそばしてる手をピタリと止めた。
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