公爵閣下、あなたが亡妻を愛し続けるので後妻の私を愛せないというならお好きなようになさったらいいですわ。ただし、言行不一致で私を溺愛するなんてことは勘弁して下さいね
「クラリスの葬儀のときに伝えた言葉は覚えているな? そのことをけっして忘れるな。正直なところ、いくら彼女ときみが、血がつながっていようと関係はない。彼女は彼女なのだから。きみにしてみれば、ラクして金貨を得る為なのだろうがな。おれにすれば、おしかけてこられて迷惑でしかない。そんなことをしなくても、金貨などくれてやる。借金など返さなくても構わないという気分だ。だから、彼女のかわりなどよこす必要はなかったのだ」

 照明が銀仮面を照らしだしている。

 その無表情な仮面を見つつ、ここまで言われて公爵家にいても仕方がないと思った。借金を返さなくていいのなら、ここまで嫌われているのに無理やり姉のかわりになる必要はないと腹が立った。

 だけど、姉同様わたしに選択肢はない。

 なぜなら、わたしには帰るべき場所がないのである。いるべき場所は失われたのだ。
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