公爵閣下、あなたが亡妻を愛し続けるので後妻の私を愛せないというならお好きなようになさったらいいですわ。ただし、言行不一致で私を溺愛するなんてことは勘弁して下さいね
 まわりくどいことは性に合わないということもある。

 もう一息。ゴールが見えてくればがんばれる。

 足を動かす速度を速めた。 

 凱旋門をくぐろうとしたとき、その蔭から何かが飛び出してきた。

 急ブレーキをかけ、かろうじて止まることが出来た。

「ガキが。手間をとらせやがって」

 四人の男たちである。いずれもシャツの上にジャケットを着用している。

 こちらにゆっくり歩を進めて来ている先頭の男は、つい先程まで「三日月亭」で様子をうかがっていたジェローム・ダンヴィルである。

 彼は、白いシャツに紺色のジャケットと同色のズボンを着用している。彼が一歩歩を進めるごとに、シガレットのにおいが鼻をつく。

 やはり、彼がジェローム・ダンヴィルで間違いない。

 そうこうしている内に、彼は四、五歩開けた距離で立ち止まった。
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