公爵閣下、あなたが亡妻を愛し続けるので後妻の私を愛せないというならお好きなようになさったらいいですわ。ただし、言行不一致で私を溺愛するなんてことは勘弁して下さいね
 はやい。

 もう一度飛び退る暇はない。

 彼の右手がわたしのコートに触れそうになった。

「ミユッ!」

 その瞬間、だれかにひっぱられた。そう認識したときには、なにか大きなものに包まれていた。

「ギャッ!」

 目の前では、ジェロームが尻尾を踏まれた猫のような悲鳴とともに宙を舞っている。

「ガフッ!」
「ギャアッ」
「グフッ」

 そして、いくつかの悲鳴が耳に飛び込んできた。
< 211 / 356 >

この作品をシェア

pagetop