公爵閣下、あなたが亡妻を愛し続けるので後妻の私を愛せないというならお好きなようになさったらいいですわ。ただし、言行不一致で私を溺愛するなんてことは勘弁して下さいね
「ほらほら。やはり、日頃の行いや人柄がよくないからですよ」

 そのとき、イーサンが可愛すぎる笑顔で断言した。

「だまれっ、バカ息子っ!」
「はいいいいいっ! さらに嘘よっ」

 ボスの怒鳴り声に、即座に反応してしまった。

 だって、よりによって可愛らしいイーサンのことをバカ息子呼ばわりするのですもの。

「こんなに可愛らしいイーサンの父親がボスだなんて、神をバカにしているわ」
「ミユ、おま……。ダメだ。落ち着け、おれ」

 ボスは、真っ赤な顔をしている。ニ度、三度深呼吸をし、アンガーマネジメントに徹する。

 深呼吸はいかなるときにも有効であることを、ボスから教えられた。だから、いまでもことあるごとにそれを実践している。

「そういえば、ミユは仔犬や仔猫といった可愛らしいものが好きだよな。だから、イーサンも? ブレントン、残念だったな。彼女は、銀仮面の強面より可愛らしい小動物の方が好みらしい」
「叔父上っ!」

 公爵まで真っ赤になっている。
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