公爵閣下、あなたが亡妻を愛し続けるので後妻の私を愛せないというならお好きなようになさったらいいですわ。ただし、言行不一致で私を溺愛するなんてことは勘弁して下さいね
 先程、わたしを殺そうとしたジェローム・ダンヴィルとその仲間たちは、隣国エルガー帝国の名うての諜報員だとか。

 ファース王国とエルガー帝国は、国力が拮抗していることもあってつねに警戒しあっている。軍事、政治経済その他もろもろの分野において探り合い、隙あらばつけ入ろうとしている。それだけではない。運が味方するようなら、要人が不慮の事故にあうよう仕向けることもあるという。つまり、暗殺をくわだてることもあるというから驚きである。

 姉は、ずっと昔からその手先として使われていた。

 姉が多くの男性と付き合っていたのは、男好きということもあったけれど、ターゲットから情報を得たり暗殺するタイミングを狙っていたのである。

 ファース王国側は、ジェロームたちを何度も捕まえてはいる。が、彼らはそれを見越して金貨をバラまいている。彼らは、ファース王国の有力者を飼っているのだ。だから、彼らを捕まえてもときをおかずして釈放される。それこそ、尋問する時間もなく。飼っているファース王国の有力者たちがそのように手をまわすから。
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