公爵閣下、あなたが亡妻を愛し続けるので後妻の私を愛せないというならお好きなようになさったらいいですわ。ただし、言行不一致で私を溺愛するなんてことは勘弁して下さいね
「それってまるで子どもの心理ですよね? ですが、どちらも当たりです。両親に無理矢理嫁がされましたし、あなたがとんでもない人だという噂をきいていましたから、正直あなたのことが怖かったのです」
「……。だ、だろうな。しかし、ほんとうは違う。違うのだ。おれは叔父からきみの存在をきいた。そして、遠くからだったがきみを見た。その瞬間、なんというか、『ビビビッ』ときたのだ」
「はい?」

 先程まで真っ青だった彼の顔の下半分は、いまや真っ赤っかになっている。

「若い兵士たちが一目惚れだの運命の出会いだのとくだらぬことを話しているのを、おれはよく笑い飛ばしていた。きみに出会う前のことだが。しかし、若い兵士たちが熱心に語り合っていたことはほんとうだった。きみを見たあの瞬間の衝撃こそが一目惚れで、運命の出会いだった」
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