公爵閣下、あなたが亡妻を愛し続けるので後妻の私を愛せないというならお好きなようになさったらいいですわ。ただし、言行不一致で私を溺愛するなんてことは勘弁して下さいね
「だが、書類はちゃんと準備している。もちろん、妻の名は、きみの名を記している。屋敷に帰って朝食をすませたら、役所に提出に行こう」

 彼は歩く速度を落とすことなくわたしを見おろし、キラキラする笑みをたたえた。

 恐れ入ったわ。彼ったら、わたしより一枚も二枚も上手なわけね。

 またまた心の中で苦笑してしまった。

「それでしたら、少しでもはやく手続きをしましょう。公爵閣下、もっとはやくはやく」

 自分でも驚きだけど、自然と彼の首に自分の腕を巻きつけていた。
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