公爵閣下、あなたが亡妻を愛し続けるので後妻の私を愛せないというならお好きなようになさったらいいですわ。ただし、言行不一致で私を溺愛するなんてことは勘弁して下さいね
 なるほど。

 とりあえず、公爵はしばらくいないわけね。

 だったら、彼が戻ってくるまでにわたしのここでの居場所を作っておかないと。

 そして、彼が戻って来たら、そうね。会話の一つ、二つ交わしたいわね。

「公爵閣下がいらっしゃらないとき、姉はどうしていたんでしょうか?」

 ふと尋ねたくなった。

 この大きな屋敷、それから公爵夫人という慣れぬ立場。

 姉は、たった一人でどうしていたのかしら。

 尋ねると、モーリスたちはおたがいの顔を見合わせはじめた。

 言いたいことがあるけれど、言えない。あるいは、言いたくない。そんな雰囲気が漂っている。

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