公爵閣下、あなたが亡妻を愛し続けるので後妻の私を愛せないというならお好きなようになさったらいいですわ。ただし、言行不一致で私を溺愛するなんてことは勘弁して下さいね
「失礼すぎるわ。最後まできいてよ。なにもわたしが宰相を暗殺をしに行くわけではないわ。それに、そんな究極の暴力より、脅す方が効果的じゃないかしら? 先程、図書館の近くでオールポート公爵子息を見かけたと言ったわよね。公爵子息が王宮の庭園の隅っこで逢引きしているのを見たの。なんと、王太子殿下の侍従の一人とよ。それはもう可愛らしい青年だったわ。あっ、イーサン。可愛らしさは、あなたに完全に負けているけど。とにかく、公爵子息は男の子がお好みというわけ」

 男爵令嬢のわたしは、貴族世界についてほとんど知らない。社交の場に出ることもないので、噂話すら耳に入ることはなかった。

 そんなわたしが、逢引きしているのがオールポート公爵子息と王太子殿下の侍従の一人がだと、どうして知っていたかですって?
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