公爵閣下、あなたが亡妻を愛し続けるので後妻の私を愛せないというならお好きなようになさったらいいですわ。ただし、言行不一致で私を溺愛するなんてことは勘弁して下さいね
 彼女は、右のふくらはぎにナイフを仕掛けているのである。

 さすがは諜報員。

 わたしも同じようにしたいとお願いしたら、叱られてしまった。

「閣下、先日捕まえたエルガー帝国の諜報員ジェローム・ダンヴィルが話があるそうです。追われているのか、手負いです。いかがいたしますか?」

 イーサンが戻って来てささやいた。

 ジェローム? わたしのことをひどく言って殺そうとした隣国の諜報員よね?

「手負い?」
「ぼくではありません。ぼくは、尋問の際にあそこまで痛めつけませんでした。もちろん、いまもです」

 ブレントンの疑わしそうな問いに、イーサンは可愛い顔を左右に振った。
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