公爵閣下、あなたが亡妻を愛し続けるので後妻の私を愛せないというならお好きなようになさったらいいですわ。ただし、言行不一致で私を溺愛するなんてことは勘弁して下さいね
「バンッ!」

 なんてこと。扉が思いっきり開いた。木製の扉が開いた勢いはすさまじく、その風圧がわたしの黒い短髪をそよがせた。

 あ、あぶなかった。

 右足をうしろへひいていなかったら、顔面か体の一部に扉がぶちあたったかもしれない。

 それにしても、わたしってすごい。

 いっさい声を出さず、動じないのだから。

 ハードボイルド系やバイオレンス系のヒロインになれるかも?

 そんなどうでもいいことを心の中で自画自賛をした瞬間である。目の前、つまり裏口が黒い影がチラついたかと思うと、喉元に剣が突きつけられていた。
< 75 / 356 >

この作品をシェア

pagetop