公爵閣下、あなたが亡妻を愛し続けるので後妻の私を愛せないというならお好きなようになさったらいいですわ。ただし、言行不一致で私を溺愛するなんてことは勘弁して下さいね
 そうよ。いま申告した内容に関しては、嘘でも誇張でもない。

 裏口からこっそり入ろうとしたという事実は、たしかにいただけないけれど。

 それはともかく、堂々としていればいい。必要以上に卑屈にならなくてもいい。

 そうよね?

 自分に言いきかせていると、彼の蒼い瞳がフッとやさしくなったような気がした。

 というよりか、笑ったような気がした。

「そうなのか、イーサン?」

 公爵は、わたしを見つめたままイーサンに尋ねた。

「違います。ミユ様は悪くありません。ぼくの早とちりです。ぼくが状況判断をミスしたばかりに、ミユ様に怖い思いをさせてしまいました」

 なんて可愛いのかしら。イーサンったら、わたしをかばってくれた。しかもわたしを奥様と呼ばず、ミユ様って呼んでくれた。

 ああ、そうね。イーサンは、公爵の片腕ですもの。公爵同様わたしを認めていないから、奥様と呼ばなかっただけよね。

 おもわず、心の中で苦笑してしまった。
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