公爵閣下、あなたが亡妻を愛し続けるので後妻の私を愛せないというならお好きなようになさったらいいですわ。ただし、言行不一致で私を溺愛するなんてことは勘弁して下さいね
 二階に上がってから、公爵の部屋がどこにあるのか知らないことに気がついた。

 が、すぐにわかった。

 笑い声がきこえてきている。

 それを頼りに奥へ進むと、彼の寝室が姉のそれの隣だということがわかった。訂正。いまはわたしの寝室だからわたしの部屋の隣ね。

 部屋の前に立つとノックをした。だけど、笑い声がきこえてくるだけである。

 そうよね。ふつうは控えの間があるわよね。

 わたしの部屋にはないけれど、屋敷の主の寝室なら控えの間があって然るべきよね。

 そっと扉を開けた。

 そこは、やはり控えの間だった。

 それにしてもずいぶんと盛り上がっているみたい。

 というか、あの銀仮面のデカブツがこんなに楽しそうに笑うなんて。というか、そもそも笑うなんて……。
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