短編集

HBDふーちゃん



『問題です!今日はなんの日でしょう!』

5月5日、0:00になった瞬間、電話をかけた。

「えー?何の日かなぁ」
『早く答えて〜』
「こどもの日」
『そうだけどぶぶー』
「海賊王の誕生日」
『それは明日ー』
「⋯⋯俺の誕生日、笑」
『はいぴんぽーん!』

⋯自分でもアホらしい会話だなとは思う。

『正解したふーちゃんにプレゼント用意してまーす』
「んぇ、なんですか」
『早くドア開けてくださーい』
「はぁ?」

バタバタと電話越しに足音が聞こえて、ガチャッ、目の前のドアが開いた。

『お誕生日おめでとう!』
「お前なんでいんのよ⋯⋯」
『ふーちゃんが寂しがってると思って』

なんて言えば、手を掴んで中へ入れられる。
引っ張られた勢いでそのまま腕の中に閉じ込められた。

「こんな夜中にバカなの?危ないでしょうよ」
『ふーちゃんに馬鹿って言われると思ってタクシーで来たもん』

声も、匂いも、温かさも、全部が久々で、
私自身が寂しかったんだなぁ、と自分で笑いながら抱きしめ返す。
お返しと言わんばかりに腕の力が強くなって、

「会いたかったよ、ずっと」

って、耳元で呟かれた。

『私も、会えなくて死にそうだった』
「死にそうって。笑」

ほんとだもん、って背中に回していた腕でぽこん、と叩いてやる。

『だから、プレゼント⋯⋯ちゃんと用意したけ
ど、私もプレゼントってことで、だめですか、』
「お前さぁ……そんなかぁいいこと言ってると食うけどいいの?」
『今日はプレゼントだから好きにしていいよ』

チラッと顔を上げれば、少しびっくりした顔の彼と目が合う。

「まじで、最高のプレゼントだわ」
『でも先に手洗うし、もっとぎゅーしてほしい』
「はいはい、お風呂一緒に入ろうね」
『えー?』
「今日はプレゼントだから好きにしていいんだもんねー?結ちゃん?」
『そうですね⋯⋯』

ニヤニヤと笑う彼に、先程の自分の発言に早くも後悔しながらぺしっとおでこを軽く叩く。
痛いわ!という声を聞きながら靴を脱いで部屋に上がった。

この後は⋯⋯秘密にしておこうかな、なんて。
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