さよなら、真夏のメランコリー

三 唯一の共感者

手を引かれるがまま歩くだけだった私は、しばらくしてハッとした。


「あのっ……!」

「誰にも見られたくないならここ。第三倉庫は廃材置き場みたいなもんだからさ」

「え……?」


連れて行かれたのは、昨日いた場所よりもさらに奥。
校舎の裏側ではなく、第三体育倉庫の裏だった。


「昨日の場所は、よくたむろってる連中がいるからやめておいた方がいい。第一第二倉庫は部活で使う奴が多いからダメ。でも、ここなら基本的には人が来ない」


にっこりと笑われて、唖然としてしまう。
毒気のない柔らかい笑顔を前に、ようやく自然と呼吸ができた気がした。


夏川輝(なつかわひかる)……?」


金色の髪が、そよ風で小さく揺れる。
太陽の光を浴びた金髪は、まるで自由だと言いたげに輝いていた。


「俺のこと、知ってるんだ。東緑が丘の人魚姫に知ってもらえてたなんて光栄だな」

「その呼び方はしないで!」


今一番、呼ばれたくない言い方に、反射的に食ってかかってしまう。


「……ごめん。無神経だった」


途端、彼は申し訳なさそうに眉を寄せ、頭を下げた。


あまりに素直に謝られて面食らってしまう。
これだと、私の方が悪いことをしたみたいに思えた。

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