彼の素顔は甘くて危険すぎる
イケメン貴公子現る?!

(ひまり視点)

あっという間に夏休みが終わった。

自分の誕生日に電撃訪問での初海外旅行を成功させた私は、当初の1週間という予定を大幅にオーバーして、夏休み終了3日前に帰国した。

というのも、復路の航空券があるにも関わらず、不破くんと不破くんのご両親のたってのお願いという話の流れで。
私の知らない所で話が進んでいたようで、帰国のために荷物を整理していたら、『復路の航空券はキャンセルしたから無効になってる』と知らされて。
結局、ギリギリまで彼の家で過ごしていた。

アメリカに宿題を持参していなかったこともあり、3日前に彼と一緒に帰国して、マンツーマンで彼に勉強を見て貰って宿題をする羽目になった。
地獄の3日間を何とか終え、始業式を迎えた頃には、夏の疲れと勉強疲れで疲労困憊。
熱中症ではないけど、体が重い。

「ひまり~、点滴する~?」
「する~~」

始業式の午後。
半日で学校を終えた私は、不破くんの自宅へとは行かずに帰宅して、点滴をして貰う事に。

患者さんの為のベッドを占拠出来ないから、自宅の自室で点滴を受ける。
院内にあるのと同じ点滴スタンドがあり、母親は手早く処置をする。

「2時間用だから」
「ん」
「二科展、来週だったわよね」
「うん」

年に一度開催される『二科展』は、公募の美術展ではかなり知名度が高い。

公募の美術展で受賞したからといってプロになれるわけではなく、もちろん稼ぐことも出来ない。
あくまでも、趣味の範囲での経歴みたいなもので、プロの人にとってはそれほど重要ではない。

それでも、学生で美術を目指している人や趣味で美術に触れている人にとっては、ある意味目標でもある。

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