彼の素顔は甘くて危険すぎる
素顔を知ってしまったら?!

11月の金曜日の夜、自宅。

最近、ずっと気になってる。
あのイケメン王子が不破くんなんじゃないかと。

学校で見る限りではそんな素振りを微塵も見せないのに。
それでも、私の眼は誤魔化せない。

歩調、ストライドの幅。
肩から指先までの長さ、指の長さと形状。
特に爪の形と手入れが行き届いてるあの爪。
それにシャープなフェイスラインと薄めで艶気がハンパない唇。
肩の位置、左右のバランス。
体全体に対しての頭部、上半身、下半身の比率。

そして、掠れたハスキーなのに痺れるような甘い声。

何をとっても完璧すぎるほど瓜二つ。
私の絶対視感が『accord』だと警告音を鳴らしてる。

「ひまりっ、こんな時間に出かけるの?」
「うん、ちょっと。そんな遅くならずに帰るから」
「気をつけなさいよ?」
「うん」

寒さ対策も万全な格好で自宅を後にする。
目的地は、あの日、あのイケメン王子に出会った場所だ。

ギターケースを持ってたから、もしかしたら近くに住んでるのか。
はたまた練習場とか何かがあるのか。
友人とかと行き会った帰りなのかもしれないけど、可能性はゼロじゃない。

だから、この眼でもう一度確かめる為に……。

20時半過ぎ。
地下鉄であの場所へと向かう。

毎日のように学校で会うんだから、本人に確認したらいいんだろうけど。
『違う』と言い切られたらそれまでだし。

あのボサボサの髪に触れて、隠された顔を見ることが出来たら問題解決しそうだけど。
どうにも近寄りがたい雰囲気を醸し出してて。
それに、男子生徒の髪を触るとか、私には出来ない。

彼氏でもないのに……。

< 25 / 299 >

この作品をシェア

pagetop