彼の素顔は甘くて危険すぎる

『誕生日』というフレーズで記憶から軽く吹き飛びそうになったけど。
さっき、『好きな子から』って言わなかった?
……言ったよね?
それって、私なの?
そうなの?!え、ちょっと、どういうこと?!

完全に脳内がパンクした。
サラッと言うあたり、冗談だとも取れる。
だけど、ファンからは受け取らないで、スタッフからのチョコは義理チョコだって言い切ってるのに。
私にわざわざ『トリュフ』をお願いしてる時点で、冗談ということが掠れていく。

何て言ったらいいのだろう?
こういう時は、話題を変えるに限るよね?

「他には?」
「え?……他にはって?」
「あれのお礼も」
「……あぁ、あれは別に構わないのに」

テーブルの上に置かれたペットボトルが目に入った。
メモまでつけてくれたようで、5本も置かれている。

「あ、言っとくけど、ちゅーとぎゅー以外ね?」
「何でぇ~いいじゃん別にちゅーでも」
「ダメだよっ、彼女でもないのに」
「彼女じゃん」
「……かりそめだけどね」
「じゃあ、本物の彼女だったらいいの?」
「そりゃあそうでしょ。本物の彼女なら……うん」
「じゃあ、あれの分のお願い事はフリを止めて、本物の彼女になって」
「……え?」

彼の言葉に驚いて彼を見上げる。

だって、ついさっきのやり取りを必死に揉み消そうとしたばかりなのに。
速攻で上書きされてしまったから。
焦るし動揺するし、心臓は踊り狂ってるしっ!!

そんな私の耳元に、容赦なく痺れるような美声で彼が囁いた。

「そしたら、キス以上のことも出来るしな」
「………ッ?!」

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