どんな君も、全部好きだから。
「夏海くん、送ってくれてありがとう」


別れ際、優依は笑顔を見せてくれたけど、さっき泣いたせいでその目は赤く腫れていた。

俺の心臓がツキンと痛む。


「優依」


俺が呼ぶと、優依は『なぁに?』という顔で少し頬を赤らめながら俺を見上げた。

少し恥ずかしそうなその表情や控えめな仕草がすごく好きだ。

俺しか視界に映していないこの距離で、俺を見上げるその綺麗な目がたまらなく好きだ。


「どうしたの?」


柔らかくて透き通ったその声も、優しい話し方も、好きすぎて胸が締め付けられる。


『好き』が溢れてしまった俺は、もう一度だけ優依を抱きしめた。

優依は声にならない悲鳴をあげて、俺の腕の中で身体をガチガチにしている。


優依の温もりを感じながら、俺は今まで以上に気持ちを伝えていくことを決めた。

『飽きてしまうんじゃないか』なんて考えたりする暇もないくらい、いつも俺の気持ちを感じていてほしい。

俺が優依しか見てないことをちゃんとわかってほしい。


身体をそっと離すと、ゆでタコみたいになった優依が目をまん丸にして俺を見ていた。

そんな姿も可愛らしくて、俺は笑いながら「また明日」と言って優依と別れた。


優依に触れた手のひらをゆっくりと握りしめながら家路につく。


「早く俺のこと好きになって・・・」


思わず漏れ出てしまった独り言は誰にも聞かれることなく、初夏の暖かい風の中に消えていった。


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