どんな君も、全部好きだから。
「は、初めまして、夏海くんと同じクラスの早坂優依です」


戸惑いながらも、とりあえず私は自己紹介をして頭をペコっと下げた。


「早坂先輩のことはけんちゃんからたまに聞いてて、どんな人だろっていつも想像してたんです!」


『だから会えて嬉しいです』とキラキラした笑顔で話してくれる須川さんに、私はドギマギしてしまう。

想像って、どんな想像をしてたんだろう。

なんだか、こんな地味で普通の人間でごめんなさいという申し訳なさがこみ上げてくる。


「もしかしてもう付き合ってるの?」

「付き合ってない」


須川さんが少し興奮した様子で夏海くんに詰め寄っているけど、夏海くんは表情を変えることなく否定する。

でも続けて、


「でも、いつかぜったい付き合ってほしいと思ってる」


と想いをはっきり口に出したので、私は一瞬にして顔に熱が集まってしまった。

驚いて見上げると、少し頬が赤くなった夏海くんと目が合う。


「ひゃー!けんちゃん好きな子にはそんなふうなんだねっ!初めて見た!」

「うるせーな、お前はさっさと行け」


ニヤニヤと見ていた須川さんに、夏海くんは心底めんどくさそうに言った。


「はいはーい、お邪魔虫は消えますよ」

「あ、りぃ、あんま帰り遅くなるなよ。蓮がめんどくせーから」

「わかってるよ。早坂先輩、今度ゆっくりお話ししてくださいね!」


そう言って元気に手を振りながら去っていく須川さん。

その勢いに終始ぽかんとしていた私は、しばらく須川さんの後ろ姿から目が離せなかった。
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