麻衣ロード、そのイカレた軌跡➍/赤き牙への狂おしき刃

本郷麻衣、赤い牙へ牙を剥く①/騒乱の顔見せ

その1
夏美



火の玉川原に着いた早々のひと悶着は、新体制下の南玉連合と、紅子さんが去った後の、ここ都県境”ホットスポット”を暗示していた

「お前ら、一列で横に並べ!ああ、北田はそのままでいいから…」

あっこが乱闘騒ぎを起こした9人に、事情を聴取してる

「よし。お互いの言い分は承知した。で、先輩、そう言うことだそうです。どうします?」

「この件は、集会が終わった後にしましょ。荒子には私から言っとくから。もう、みんなは持ち場について。いい?これ以上の騒ぎは絶対、起こさないで。他のメンバーにもしっかり伝えなさい。いいわね?」

「はい!」

9人は一斉に各所属のエリアに散って行った


...



「先輩、今の一件どう見ます?」

「言うまでもないわ。本郷麻衣の仕掛けでしょ」

「じゃあ…、親衛隊にケンカを売ったと…」

「ううん、正確には南玉全員によ。荒子も鷹美も真澄も、それに…、OG、OBも含めてだわ」

「えー?OGとOBもですか?ふー、だとしたら、私らでは手に負えませんよ」

「あっこ、視点の問題よ。いくら本郷でも、全員をまとめて敵に回せないわ。第一、南玉という組織内から仕掛けてきてるんだから、そもそも。そうでしょ?」

「はあ…、まあそうですね…」

私はすでに確信していた

本郷麻衣は、まず現状のフレームを揺るがすことで、次のステップを見据えてくると…


...



「ふふ…、あのね、あの子は敵と味方を選別してるのよ。厳密に言えば、潰すべき相手と利用できる相手ということじゃないかな。まあ、今日は最初だけど、本郷はいきなりカウンターでくるわ。さっきのも、あいさつ代わりのジャブなんかじゃない。可能なら一気にって腹は常に持って、かかってくるんじゃないかしら」

「では、どうするんですか?さっきの件は」

「集会前の”継承”の席で、私が切り込むわ。とりあえず、みんなの反応を集約する。本郷は南玉の足元を見切っているだろうから、それぞれの思惑をさ、ヤツには逆手に取られないことが重要になるわね」

「先輩、私には難しくて今イチ、ついて行けませんから、よろしくお願いしますよ」

私は苦笑して、横に立っていた、あっこの脇を肘でおっぺした

さあ、新体制の門出となる総集会では、私においても総活となる…







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