麻衣ロード、そのイカレた軌跡➍/赤き牙への狂おしき刃

それはオールオンの夜だった①/麻衣と狂犬のハンパなき前哨戦

それはオールオンの夜だった①/麻衣と狂犬のハンパなき前哨戦
その1
麻衣


「静美、大丈夫だから…。こっち来てな。こうなったら、麻衣に任せよう、なあ」

テント内の地面に膝をついて取り乱す静美のことは、久美がうまく繕ってくれてるわ

...


「よし、二人いっぺんに行くぞ、歯を食いしばれ!」

バシーン!バシーン!

私たち二人は吹っ飛んだ

はは…、コピー軍団のコイツ、かわいそうに

私の巻き添えだわ…(笑)

総長の鉄拳、全開パワーでもらっちゃって…

両手で頬をあてがい、涙目だし、コイツ…

「これで制裁は終わりだ。何か言いたいことあるヤツいるか?遠慮はいらない」

総長は右の拳を左手で摩りながら、全員を前にして言葉を発した

我々からは誰も発言はなく、すぐに軍曹さんがまたでかい声だ

「よし、本郷を除いてテントを出ろ!」

”私は大丈夫だから…。みんなを頼む”

私は久美に、そう無言でメッセージを送った

久美は頷くと、心配そうな目で振り返っている他のメンバーを押し出すように、テントを後にした


...


そして、いよいよだ…

テント内では、執行部3人と残った私の”会談”の場になる

おそらく、週末の集会の件についての聴取だろう

へへ…、顔面ヒリヒリ、頭クラクラで、もう限界だが、もう一勝負だ

ここは踏ん張らなきゃ…


...



私以外の1年が去った後、総長さんは静かなトーンで私に問いかけてきたよ

「本郷、聞け!これから”週末”の経緯を聴取するぞ。いいか?」

「はい…、お願いします」

「じゃあ、ここ座れ」

「いえ、大丈夫です」

正直、大丈夫じゃないよ…

”損な性格”の私は、そのまま立っての聴取となった

「おい、本郷…、お前へはフルだった。よく立ってられるな。大した根性だよ。そのエネルギーが願うべき方向に注がれれば、頼もしい限りだ。逆にそうでない場合、危険極まりないと捉えなければならないふだろう。そして、対処だ。いいか、そういうことなんだ、責任ある立場としては…」

そのお言葉、至極ごもっともだが…

私はそういう”型”には収まらない

ごめんなさい




< 34 / 53 >

この作品をシェア

pagetop