魔法のいらないシンデレラ 3
「そう言えば、瑠璃ちゃん。明後日からいよいよ京都だね」
「あ、はい。なので次の出勤は、1週間後になります。よろしくお願いします」

いつもの調子に戻って青木とそう話していると、加藤や山下ら他のメンバーも話に加わる。

「そっかー。瑠璃ちゃん、清河(きよかわ)さんによろしくね!」
「またお会いしたいなー」
「うん、あの花火大会が懐かしいよな」

皆でしみじみと頷き合う。

京都の老舗ガラス工房を営む清河は、ホテル フォルトゥーナ東京に作品を卸してくれている他、かつては花火大会の日に上京して、ホテルの屋台で出店してくれていた。

だが、そんな清河も、今年で85歳。
気軽にこちらから上京をお願い出来なくなっていた。

それでも、ホテルのショッピングアーケードに並べる作品は作り続けてくれており、瑠璃はそんな清河に直接お礼を言おうと、総支配人の夫、一生(いっせい)やすみれと共に会いに行くことにした。

一生は初め、妊娠中の瑠璃の身体を心配して、自分だけが行こうか?と言っていたが、瑠璃は、体調も安定しているし、今のうちにすみれにも家族旅行をさせてあげたいから、と三人で京都に行きたいとお願いしたのだった。

2泊3日で京都を訪れ、清河の作品を直接選ばせてもらってホテルに配送する他、瑠璃の祖母の料亭にも顔を出す予定だ。
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