魔法のいらないシンデレラ 3
第十二章 スタッフは財産
「なんだ?大事な話って」

すみれの誕生日が過ぎた次の休日。

一生は、瑠璃とすみれを連れて実家に顔を出していた。

祖父母にも誕生日を祝ってもらい、プレゼントを手にしたすみれは、嬉しそうにリビングで祖母と遊んでいる。

一生は、ソファに瑠璃と並んで座ると、大事な話があると父に切り出した。

「今日は総支配人として、折り入って社長にご相談があります」

顔つきを変え、真剣に話し始めた一生に、父も姿勢を正す。

「私は常々、社員により良い暮らしの中で仕事をして欲しいと願っています。仕事と同じようにプライベートも大事にし、日々の生活に幸せを感じて欲しいと」
「ああ、そうだな。それでお前は、社員の定時を早めて残業も制限した。それが上手くいってないのか?」
「いえ、その点については、概ね上手く運んでいます。今日ご相談したいのは、その事ではありません。社員の住まいの事です」

住まい?と、父、いや、社長は眉を寄せて聞き返してくる。
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