魔法のいらないシンデレラ 3
その後、早瀬から簡単な補足があった。

まず、今ここにいるリーダーは、あくまで他の社員の意見を橋渡しする役割であって、その意見を1つにまとめようとする必要はないこと。

リーダーだからと言って、必ずしも社宅となる物件に引っ越す必要はないこと。

幅広い年代からリーダーを募ったが、決してその立場の代表という訳ではないので、それぞれ生活の変化があってももちろん構わないこと。

何か変化がある場合は、リアルな意見も是非聞かせて欲しい、などが説明される。

そしてメンバー同士、簡単に自己紹介をする事になった。

「こういう時は古株から参りましょうか」

美容室の今井チーフマネージャーが、笑顔で立ち上がる。

「えー、私いつもは、地下1階のトータルビューティーサロンに、モグラのように篭っております、今井と申します」

あははと、皆から笑いが起こる。

「認知症の主人の母を自宅で介護しています。私の仕事中は、主人がテレワークで在宅するようにして、日々なんとかこなしているという感じですわ。同年代の仲間が、やはり親の介護が始まって家を空けられなくなり、仕方なく退職していくのを何度も見てきました。その度に私も辛くて…。なので今回のプロジェクト、とても有り難いお話だと思っております。私に出来る事なら何でもやりますわ。よろしくお願い致します」

皆は一斉に拍手した。
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