うそつきな唇に、キス




……そんなこと、あっていいはずもないが。


そう思いながら、あまり見せびらかすものでもないと、画面を暗転、したその時。



「あれ。3人ともスマホ見てどうしたんですか?」

「?!」



静かな驚愕が、3人の胸の内を支配した。


見てくれはあれだが、全員それなりの経験を積んできたある種の猛者だ。その3人が、多少気を抜いていたとはいえ、ひとり見知った人間の足音やドアの開閉に気づかないほど、腑抜けていたつもりはなかった。


だからこそ、驚いたのだ。音ひとつなく、気配すら殺して背後に立っている、彼女の存在に。



「……える、随分早かったな。まだ昼休憩は残っているが」

「表情筋はばっちり治してきましたので。若サマこそ、何か急を要するご連絡でも?」

「いや。……お前の挙動について、少しな」

「やっぱり変でしたか……」



らしくないとは思ってました、と言ってむにむに自分の頬を触る彼女に、いまだ緊張が抜けていない。



< 197 / 504 >

この作品をシェア

pagetop