天使がくれた10日間
いつも拓と女を連れてくる駅前のカラオケ。
ユカは拓にべったりで、俺と梓なんて頭の端っこにもない様子。
俺も梓に話しかける努力はしたけど、あまりに話さない梓にイライラして、1人で勝手に曲を入れて歌っていた。
「俺、トイレ行ってくるわ」
「あ、あたしも行く〜」
拓とユカが、同時に立ち上がった。
拓がこっちを見て二ヤッっと笑う。
この顔をした拓が女を連れて部屋を出たときは、そのまま帰ってこない。
‥トイレ行くのに、必要のない荷物を2人ともちゃっかり持っているのがその証拠。
俺は、隣でうつむいたままの梓に視線を向けた。
「あいつら、多分あのまま帰ってこないぜ?」
「‥‥うん」
「‥俺らもどっか行く?」
俺の言葉に、梓は顔を上げた。
「うち、親いねぇから泊まってく?」
コクン、
と、
梓は小さく頷いた。
‥こいつも、ただ俺とやりてぇだけのミーハー女か。
『私、M高の坂下透也とやったんだ!』
地元の高校の女達は、俺みたいなチャラ男とやったってゆうのが自慢話になるらしい。
‥バカみてぇ。
俺は芸能人でも何でもない。
ただの、
どこにでもいる高校生で普通の男なのに。
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