恋の仕方、忘れました





唇が離れてお互いの視線が重なると、自然と笑みが零れた。

そして彼は再び裾から手を滑り込ませると、器用にホックを付け直し「帰ろうか」と耳元で囁く。


それに頷くと、主任は私のデスクのパソコンをシャットダウンさせ、もしかすると警備員に出くわすかもしれないのに私の手を引いて歩き出す。


その堂々とした姿すら、今の私をきゅんとさせるのに十分だった。


ふたりきりになれなかった時間を埋めるように、彼の行動ひとつひとつが私を満たしてくれた。

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