世界の数よりも君と一緒にいたい
千世の笑う顔を見つめていたら手首を掴まれた。

「え……」

「ん?」

「いや、手……」

「えっ、あ、もしかして、女の子に触られるの初めてだったり?」

ニヤッと笑う千世。

だんだん手を掴まれたくらいで動揺してた自分が恥ずかしくなってくる。ああ、なんか僕ってなんも知らないな。勉強頑張ってたのに、勉強だけじゃ得られないものがあった。

「そうか、初めてなのかあ。そそられるねぇ」

千世の言う言葉さえも理解できない。一体僕は何年塾に通って、その時間何を学んでいたのだろうか。

やはり塾がすべてではなかった。人と関わって学ぶことだってあったんだ。親は間違っていた。そして親の言う通りにした僕も間違っていた。

ならば今から、死ぬまでの少しを、間違えないで過ごそう。千世と一緒に。

「あたしの手、掴んどいてね。じゃないと世界に移転できないから」

「え、うん」

言われた通りに握ると、千世が祈り始めた。

地面に魔法陣が浮かび上がって、そのまわりをシャワーみたいにザーザーと何かが降り続ける。けれど僕たちが立っている魔法陣の上にはその“なにか”は降っていなくてまわりを覆いつくしているような感じだ。

視界が金で埋め尽くされて、だんだん薄れてきたと思うと視界がぱーっと開けた。
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