世界の数よりも君と一緒にいたい
「ねぇ、千世」

「ん? 何?」

「ううん、なんでもない」

「ふふ、何それ」

何か用があったわけじゃない。何となく、本当に何となく、名前が呼びたかっただけ。

「今日はどこ行く?」

「え、行くって……。寝たりしないの?」

「ふっ、だって時計動いてないよ?」

公園の時計を指さしてニカッと笑う千世。

あっ、と確認するとやはり時間は一分たりとも進んでいなかった。

ここは時間がない、んだ。なんか寂しいな。生きてないみたいな感じ。いや、もうここに来た時点で生きてないも同然か。

虚しさを紛らわすために空を煽ったけれど、あるのは灰色じみた虚空があるだけだった。
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