君と過ごした世界は、どうしようもなく暖かい
その日は一日いつもよりしっかりと授業を受けられた気がする。
気を引き締めたおかげか、はたまたひそかに放課後を楽しみにしていたからか。

さすがに教室の中でよし帰ろうと誘われたりしたらクラスの人にびっくりされそうだったので私は早めに昇降口に向かった。


昇降口で暖を待つ、この時間でさえ新鮮で少し
楽しくなってしまう。
我ながら子供みたいだ。

先に行ってしまった私に暖はもしかしたら怒るかもと思っていたけれど少し遅れてきた暖は

「冷、ここにいたんだ。待っててくれてありがと、じゃあ帰ろっか」

と優しく言ってくる。

私が先に教室をでたことについて文句のひとつも言ってこずに話しだすものだから一瞬あれ?と
思ってしまう。

暖と話してるとそういうことが多々ある。

"普通"という言葉を使うのはあまり良くないかもしれないが、暖は普通ではないと思う。
もちろん、いい意味でだ。

普通は聞くでしょ!みたいなことに無理やり追求してこないし、彼には棘を感じないのだ。

皆、誰しもが棘をもつ。嫌なことがあったら暴言をはいたり誰かとぶつかり合う。


逃げ出したいことがあれば弱音を吐く。

悪口を言いたくなくても人に合わせたり、本当に思っていなくても同調をする。

取り繕っても人間なんてそんなもの。それは私も例外ではない。

けど暖はどことなく人間らしさを感じない。

醜い部分が全く見えなくて、かといって完璧で
とっつきにくいかと言われるとそうでもない。

まるで最初から人に期待していないような、
目を離したらパッと消えてしまいそうな、
そんな雰囲気を感じてしまう。
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