君と過ごした世界は、どうしようもなく暖かい

今日は大変な一日だった。

何だか最近色々なことが起きすぎだな。
暖が急に転校してきたり､桐生くんという謎の生徒に会ってしまうし。

さっきのことを思い出す、久しぶりに大声をだしたことに自分でも驚いた。

あんなに感情的になってしまうなんて。

明日からまた晒し者だな、と憂鬱な気分になっていると歩いていると後ろから声をかけられる。

「冷、どうしたの？そんな暗い顔して」

「っは、…暖！？」

後ろにはいるはずのない暖が立っていた。
このパターンは何度目だろうか、いつも暖は
突拍子もなく私の前に現れる。

確かにさっき屋上から暖は見えたがその後授業にくる様子もなかったし帰ったのかと思っていた。
「…なんでここに？」と思わず返した。

「んー、冷に会いたくて、かな。」

…何を言ってるんだこの人は。
そんな意味のわからないことを言う暖のせいで
頬の赤みが増しているのがわかる。

それに驚きすぎて忘れていたけれど私は暖と話してはいけないのだった。

切なさや、恋しさで私は胸が締め付けられる。
さっきの言葉が本当なら、暖はわざわざ私に会いにきてくれたのだろうか。

もう、こうやって話すこともできないのか。
そう思うと、別にいいじゃないかとずるい私が囁いてくる。

でも、もしまたこの状況を見られでもしたら暖も何かを言われてしまう。

「……ごめん暖、私もう暖とは話せない」

急にそんなことを言い出す私に「え…何言ってるの？冷、僕なんか悪いことしちゃったかな」と戸惑っているのが分かる。

でも仕方がないのだ。これも暖を守るためだ。
何か文句を言われたりするのは私だけで十分だ。

「本当にごめん、もう帰るね」
そう言い私は暖から逃げるようにその場をあとにした。

冷待って！と暖の声が聞こえるがそんなのも無視して私は全速力で走った。

走りながら私は居た堪れない気持ちになる。
暖はなにも悪いことなんてしていないのにあんなことを言わなければならないなんて。