君と過ごした世界は、どうしようもなく暖かい
「…あんた、うるっさいんだよ!!チカはあんたなんかと話したくないの、分かんないの?」
そう口にした彼女は、いつもより感情的で声を強く荒らげている。

私は佳奈の言葉に何も言えなくなってしまう。
そんな時、今までクラスの中ではアクションを起こさなかった暖が口を開いた。

「佳奈さん、それは誰が決めたことなの?」

声は優しいはずなのに、少しいつもよりトーンが低い気がするのは気のせいだろうか。

「…え?何…暖くんまで急にどうしたの」
佳奈が突然の暖の言動に困惑しているのが分かる。
もちろん、私も、クラスメイトだってそうだ。

皆が、暖を見つめていた。

「チカさんが聞きたいかどうかは、この子が決めること。君が口をだすことじゃないんじゃない?」

いつもの暖よりも言葉が刺々しいのが分かる。
表情は優しくニコニコしているのが逆に怖い。

「…は、何言って…」

「ねぇ、もうやめようよ。
君も疲れるでしょ、本当の自分を隠すのは」

暖の言葉に、彼女が一瞬目を見開いた。
「…っ」
その時、彼女の目には涙が溜まっているように見えて。佳奈はその場から逃げ出すように教室の外へ走っていってしまった。

「…佳奈っ!!」
チカが彼女の名前を呼ぶ。

今のは何だったんだ。暖は一体何を知っていたのか。
佳奈はなぜ涙を浮かべていたのか。

分からない、分からないことが多すぎる。
それでも私は今この現状を、暖がくれた今を無駄にしないようにと思った。

「…チカ、話してもいいかな」

チカは一瞬戸惑った表情をしていたが、数秒後には覚悟が決まったように「わかった」と言い二人で教室をでた。



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