君にありがとう【咲】



 彼らの言うことは何1つ間違っていない。

 けれど、1年に1回しかない、大切な行事だ。

 文化を大切にすることは、悪いことなのだろうか。

 また1つ、深いため息をついた。



「咲、なんでそんなにため息をつくんだ?幸せ、逃げるぞ?」



 聞き慣れた声に、私は振り返った。

 そこには、整った顔立ちの男の子が立っていた。

 彼は榎 相馬(えのき そうま)。

 私の幼なじみであり、医者志望のイケメンさんだ。



「相馬……。うぅん、ため息なんてついてないよ?」

「嘘だ。後ろからずっと見てたぞ。2回もため息しているのが見えた」


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