ゼニスブルーの交差点




「朝貴、連絡先……」

「まじか、お願いします」

 スマホの中に入って来た朝貴の新しい連絡先を見て、ほんわり優しい気持ちになる。何でもない時に、会わなくても朝貴と話すことができるのだ。

「あさなの写真のパンダの貯金箱、頭の傷って俺が付けたんだよな」

「そうだよ、あの時ムカついたなぁ。喧嘩したよね」

「俺悪くないって、喧嘩したな」

 たくさん笑って泣いて喧嘩して。小さい頃一番近い存在だった朝貴が、再び一番近い場所に戻って来た。

 スマホの明かりを消すと、見えない所でギュッとちゃんと手を握ってきた朝貴と目を合わせて、自分も口角を上げる。もう、小指じゃないね。

 ──写真は、ただの一枚も撮らなかった。

 でも、思い出はしっかり心に残り続けるから。





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