⑥姫は成瀬くんに守られたい✩.*˚
 そして、その日が来た。
 駅前で待っていると白いTシャツとデニムのパンツ姿で彼は現れた。

 制服もジャージも男子は漆黒だから白を着ている姿がとても新鮮。
 
 成瀬くんを改めて見ると身長も高いしスタイルも良くて、すごくカッコイイ。

 シンプルな今日の服装もカッコよく着こなしていた。


 仮の騎士になると彼は言っていたけれど、実際何をすれば良いのかお互いに思いつかなくて。岩山さんの発案で、とりあえず落ち着ける場所でお話をしましょう。ということになった。

 大きめなカフェに入る。
 人は空いていて、落ち着けそうな雰囲気。
 岩山さんはちょっと離れた席に座る。

 私たちも2人用の席に向かい合わせに座った。私は紅茶を頼み、成瀬くんはオレンジジュースを注文する。注文した飲み物が来ると成瀬くんは単刀直入に質問してきた。

「なぁ、どうして根本を騎士にするんだ?」
「……私の騎士としてふさわしいと思ったから」
「目が泳いでる。嘘だろ?」
「ほ、本当だよ」
「何か言われたか? 例えば脅迫されたりしたとか? あいつなら自分が騎士になるためにやりそうだな……」

 いきなり核心を突いてきた。

 成瀬くんが根本くんを背負い投げしたのも、元はと言えば私が原因で。騎士に根本くんを選べば、成瀬くんが退学になることもないし、迷惑をかけなくてすむ。丸く収まると思った。

 だから余計なことは言いたくなかった。

 根本くんを騎士に選ぶって言えば、成瀬くんはただ「そっか、分かった」とかクールにひとこと言って、それで終わりかなって思ってた。
 なのに、成瀬くんは、仮の騎士になるとか言い出すし、今も質問ばかりだし。

 彼がこうして真剣に向き合ってくる程にしんどくなる。
 どんどん私の騎士になってほしいって気持ちが溢れてきて。

「ねぇ、一旦、この話はお休みにしてほしい、です」
「あぁ、ごめんな、こんな風にグイグイ言われたら引くよな」
「いや、そういうことではなくて……」

 次に話す言葉が見つからない。
 彼も話すの得意じゃなさそうだし、気まずい空気でお互いに無言。

 私は言葉を探した。
 
「ねぇ、成瀬くん、オレンジジュースが好きなんだね。学校でもよく飲んでるよね」

「うん。小さい頃から好きかも」

 彼が学校でオレンジジュースをよく飲んでいる。そういうことも私は知ってて。
 私、最近本当に彼のこと、見てるなぁ。




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