すべてを奪われ忘れ去られた聖女は、二度目の召喚で一途な愛を取り戻す〜結婚を約束した恋人には婚約者がいるそうです〜

 結界を壊さないと呪いが解けないという絶望的な状況に落ち込んでいたけど、話せるようになるなら一歩前進だ。希望の光が見えたような気持ちで、カイルと目を合わせると彼も心から喜んでくれているようで、瞳には薄っすらと涙が浮かんでいた。


 するとそんな喜びであふれている部屋に、コンコンとあせったようなノック音が響き渡る。


「司教様! お話し中に申し訳ございません! 入室よろしいでしょうか?」


 外で控えていたブルーノさんの声は、動揺しているみたいだ。司教様がすぐさま入室の許可を与え、入ってきたブルーノさんが用件を言うと、そのあせりの原因がすぐにわかった。


「王宮からアンジェラ王女がお越しになっております。至急、司教様に面会したいと」


(アンジェラ王女がここに?)


 予想もしていなかったその言葉に、さっきまで大喜びしていた気持ちが一気に凍るのがわかった。
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