すべてを奪われ忘れ去られた聖女は、二度目の召喚で一途な愛を取り戻す〜結婚を約束した恋人には婚約者がいるそうです〜


「聖女様、先ほどの私のご無礼をどうかお許しください」
「わ、わかってもらえたなら、それでいいです。それにしても、なんであんなに疑ったのですか?」


 この人はもしかして人を見た目で判断する人なのだろうか? 私はこの教会から出たことがないからわからないけど、もしここの人たちが差別されているのなら、気分が悪い。


 じっと睨みながらそう問いかけると、騎士は少し言いにくそうに説明し始めた。なんだか赤くなっているように見えるのは、気のせいだろうか?


「……それはあなたが、あの女遊びがひどいことで有名な、ジャレド氏の体をさわっていたからだ。君たちはその、そういった関係なのかもしれないが、真っ昼間からあんな上半身裸の男の体をまさぐるなど――」
「ま、待って待って! 待ってください!」


 予想もしていなかった騎士の答えに、頭が真っ白になった。とんでもない誤解だ。私はあわててさっきのマッサージの意味を騎士に説明した。


「あれは浄化の授業なんです!」
「え?」
「瘴気が体に入って、病気になった人を浄化する練習なんです! 師匠には瘴気を取り込んでもらって、それを体から出すために、ああやって……だから! 私と師匠はあなたが想像しているような関係ではありません!」


 息継ぎもせずに一気に話したからか、ゼーゼーと肩で息をしてしまう。しかしそんな私の迫力で信用してもらえたのか、「……重ねがさねすまない」と騎士が謝る声が聞こえた。
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